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フライネ王国の後宮
神官長に、カティアが魔術を使える人間に拉致されたらしいと報告すると、彼は驚いたような顔になった。
「神殿の中では外部の者は魔術を使えないはずなのですが……」
たとえば、治療を受けにきたと装った魔術師が、中で思いきり魔術を放てば、神殿を内部から破壊することが可能だ。
そんなことになっては困るから、神殿の中はエイディーネの寄神官として正式に登録されている人間以外魔術が使えないようになっているそうだ。
「……でも、浴室の床に転送陣が残っていましたわ。それに、浴室の扉には、エイディーネの結界を無効にし、浴室内で何が起こっていたのか察知されないようにする魔術の痕跡もありました」
口にはしなかったけれど、シルヴィにも不可能ではない。
まあ、シルヴィの場合神殿ごとつぶしてしまった方が早いしやる必要もないのでやらないが。
「神官長、調査は王家で引き継ぐことにする。カティア嬢の不在については、体調不良で療養中ということでもうしばらく隠しておけるだろう。カティア嬢の治療を受けに来た人の対応にあたるため、回復魔術の使い手を、こちらで手配する」
「かしこまりました」
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