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再会(1)
この一月が始まった真冬に遠方への呼び出しがあった。
とはいえ二十二歳大学四年の俺が持っている仕事なんてまだアルバイト二つしかない。
そう…呼び出しとはいっても『同窓会』の呼び出しだった。
高校の同窓会だ。なぜこの時期にとは思いながらも、年明けの休みに続いていた土日を利用して、俺は地元の大学から、母校である大阪の高校へと向かった。
なぜ高校が地元ではないのかと言えば、理由はよくある父親の転勤。
中学卒業直後から高校卒業の丁度三年間、俺は地元と比べたらかなり都会な大阪の高校に通っていた。
最初こそ無理やりに入れられたようなものだったが、通い始めて一か月も経った時には気の合う友達も出来、なんら周りと変わらない高校生活を送った。
一つ異様に思ったのは、やはり大阪弁。皆早口で、聞いたこともない口調で話す。
もちろん意味を訊けばすぐさま教えてくれはしたが、卒業まで慣れることはなかった。
長年その地域にいれば自然とそ方言がうつると聞いたことがあるのだが、俺にはそれが全くなかった。とにかく自分だけ標準語。
大阪の人たちは大阪弁を他県の人々に真似されるのを心底嫌がっているらしいので、その辺では助かっていたが。
なにがともあれ、俺の高校生活は充実したものだった。学業も部活もそれなりに、友達と遊んで。
そして入学して半年も経った時には、初めての恋人も出来ていた。
元気でハキハキとし、何事にも向かっていく…ちょっと強気な同じクラスの女の子。
名前を紅葉。
互いが教室で隣の席だったことがきっかけだった。
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