Vol.1

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 何杯か生ビールをおかわりし、塩タンやロースをお腹いっぱい食べている間、相楽さんは途切れることなくしゃべり続けた。  私は、訊かれたことに答えるだけだったので、挨拶以外の会話をするのが初めての相手でもすごく楽だった。  そう長くもない時間の中で、彼女は色んな話をしてくれた。  仕事のことや恋愛のこと、オススメのコンビニスイーツやハマっているリアリティ番組の話など、表情をくるくると変え、身振り手振り表現力豊かに話すのを見ていると、彼女の目的はまだ分からないけれど、悪い人ではないのかもしれないと思った。  例え、悪い人だとしても素敵な人だと思った。 「そっかー。栞里ちゃんもうすぐ誕生日なんだぁ。必ずプレゼント送るから! じゃあ、またねー」   ほろ酔いの彼女は何度もそう言って、上機嫌で帰って行った。  結局、最後まで彼女が何のために私を誘ったのかは分からなかった。  いざとなったらブロックすればいいと思いLINEだけは交換したけれど、それが目的ではないはずだ。  本当にただ旧友との再会を楽しんだだけ……?  誕生日プレゼントを送るなんて。どうせ酔った勢いだろう。きっと、素面に戻ったら今夜のことなんか忘れているに違いない。  まともに取り合う気にはなれず、すっかり忘れていたのは私の方だった。  自分的にすごく微妙で色々惜しい誕生日の夜、自分で祝うことも祝ってもらうこともなく、部屋でひっそりといつも通りに質素な夕飯を食べていた時だった。
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