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Begining 開幕ーー『終わりの始まり』
遥か昔……
ずっと昔……
もしこの世界が『始まった』とするのであれば、今から語られる二人の少女の話は『始まりの話』
でも、それは『終わりの始まり』ーー
未来の少女達が人生を嘆き、苦しみ
世界の形が壊れて
『感情』が具現化して
この世界の人間が『死なない』由縁の話
◇
そこは、山の新緑に包まれる学校。空には雲一つなく、太陽が燦々と地面を照らしていた。
校庭に生えた一本の桜の樹。この『特別な学校』にある、象徴たるその樹からは桜の花びらがひらひらと私達の今の上に舞い降りてきていた。
桜の木の下には死体が埋まっているらしい。そんな話を小耳に聞いた私は人間の死について考える。
目を開き、隣にいる少女に質問してみた。
「もし、人が『死を望む』とすれば、その理由はなんだと思う?」
彼女は私に寄りかかり着ていた着物を直しながら、こう答えたのであった。
「辛い事が有ったからなのかな? 人生に飽きてしまったからなのかな?それとも、愛する人の為に死にたかったからなのかな?」
彼女は首を傾げながら何故そんな事を聞いてくるのか、私に問いかけた。
「……私はさ、きっとそんな問いかけに答えなんて無いと思うんだよね。でも、そこに答えを求めるのであれば……」
「「人間に感情が有ったから」」
同じ言葉を同じタイミングで言い合えた私達は、喜び合い手を繋ぎ合う。
「やっぱり、キミしかいなかったんだね」
「ごめんね桜、これで私は愛した人と愛する人の三人で永遠に一緒にいられる」
彼女の柔らかな身体を抱きしめられると、彼女はその見た目に似合わない一人称を使いながら私に微笑んだ。
「僕とキミと王様……それに学校のみんなで幸せになる結末を祈っていたよ」
「でも、そんな綺麗な結末、私には届かなかった」
「でも、それがキミの願いなら、仕方ない話だよ」
私は何かに謝り続け、桜の樹にもたれかかる。
「『死の無い』世界って、幸せだと思う?」
「分からない……でも、キミの描いた世界なら、きっと大丈夫。だって僕が支えるから」
身体からやがて力がなくなっていき、私が人間の姿ではなくなり、どんどんと桜の樹に溶け込み、樹が大きくなっていく。
「誓うよーー楓。僕がキミの罪を償う。いつかその贖罪が終わった時、キミに逢いに行く」
意識までもが薄れていく中、私が聴いた声は彼女の願いだった。
「だから、二度と僕を忘れないで……」
そして、樹となった私は世界を壊し、世界の形を変え、私自身が死を糧とする事で人間から死を無くし、世界樹として君臨し続けた。
これはこの世界の『始まり』。
ーー『終わりの始まり』
私達二人の少女の願いが始めた、最悪な世界の話だ。
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