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「椎名さん、笑ってないで葵に何か言えよ」
「うん、まずこれだけは言っとく、二人ともこの事は絶対に認めたり公にしないで欲しい、暴力団関係者と血縁なんていい事は何も無い」
「………」
え?
椎名の目。
笑っているけど真剣って言うか、困っているけど観念してるって言うか、ややこしいから纏めると………
暗に認めてる。
え?え?
「ええ〜〜っっ!!嘘だ!ホント?ホントにホント?冗談じゃ無くて?息子じゃ無くて?!」
「息子の方がいいか?」
「じゃなくてっ!!、何?血縁ってどんな?遠縁?親戚?従兄弟、又従兄弟、再従兄弟、この際だから親父の従兄弟の兄弟の息子の甥とか?」
嘘に決まってるのに嘘か本当か分からなくて嘘だとわかっているのに嘘に慌てた。
だって、3歳上に兄弟がいたならどんな事情があってもそれなりの痕跡とか耳に入る情報とか気配とか何かありそうなのにそんな物は何も無い。戸籍にも何も無いし父親は父親で「子供を作った事が人生最大の失敗」と言って憚らない。
「健二さん、従兄弟の兄弟の息子の甥ってほぼ他人ですよね、俺は兄弟だと思いますよ、どう見ても似てるもん」
「似てる?……かな?」
「はっきり言えばそっくりです」
「じゃあそれはもしかしたら………椎名さんでもいいって事?」
「何が?」
「つまり昨日の夜みたいな……」
カアッと赤くなった葵から「死ね!」と体当たりが飛んできた。
いつもの事だし、どうって事も無いけど葵は学んでいた。
ちょっとよろけた体にもう一回、笑ってる間にもう一回、背中に壁が当たったなと思ったらバァンッとガラスが砕けて体が軽くなる。
気が付いたら足が浮いていた。
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