生死流転《しょうじるてん》に彷徨《さまよ》う

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 初めて男を受け入れたのは十六歳の夏休みだった。テレビやネットではドラアグクイーンが楽しそうにはしゃぎ,ドラマではゲイが当たり前のように取り上げられていた。俺がそういった人種に興味があったのは自分でもわかっていたが,実際になにかしたいとは思っていなかった。  たまたま高校の友人と新宿で買い物をすることになり,家から2時間ほどかけて新宿まで出ると,南口の改札前で待ち合わせをした。俺は時間通りに新宿につき,歩道で楽器を演奏する連中や大道芸人を見ながら友達を待った。  時間になっても友人から連絡はなく,何度かスマホに連絡をしてみたがつながることはなかった。待ち合わせ時間から三十分ほど過ぎたころ,友人から連絡があり「インフルエンザにかかった」と簡単なメッセージがスマホの画面に流れた。  会話ができるのかそれとも高熱でうなされているのかもわからないメッセージを見て,インフルエンザになった友人を責める気もなく,しぶしぶ一人で買い物をすることにした。  南口から東口へと向かって新宿通りに出ると,お店を眺めそこから靖国通りへと移動した。百貨店を見て回っても欲しいと思える洋服などなく,原宿へ移動しようと思いながら新宿駅へ戻ろうと歩いていた。
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