朝7時45分、三両目、前の扉

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 結婚してから今の家に移り住み、転職してもう10年になる。  娘は来年中学三年生になり受験生だ。下の息子も中学に上がるから、妻はパートを始める予定で、舞い上がるほどの幸せはなかったように思うけどズドンと落ち込むような事もなかった。  俺の通勤時間は沿線にある三校の通学時間と被るようで、毎年入れ替わる顔ぶれにそんな時期が来たのかと思いつつも、そんな事で季節を感じるのもなぁ 俺も歳とったなぁと実感する。  電車は決まった場所に乗るから、実際はそこら中に知り合いでもない見知った顔はあるのだけど。  娘がこの沿線の高校に通ってくれたら、一緒に通学出来るのかな、それとも嫌がるかなと一人考える。  小一時間かかる会社までの時間は、どうも年寄りくさくなってダメだなと苦笑いが出る。  顔見知りは知り合いではないから、挨拶もしないし目を合わせる事もしない。  よく見る顔なのに、不思議な関係だなと思う。  ここに乗り合わせた人にもそれぞれに人生があって、それぞれの生活があって。  そんな事を考えるようになった俺は、多分年寄りなんだろうなぁ。
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