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消 滅 言 辞
それは、ごく些細な違和感から始まった。
普段であれば気にも留めない、あるいは気にしてしまう事が馬鹿馬鹿しく思えるような、その程度のものだ。
仕事帰りに駅前をぽつぽつ歩いていたら、学生風の男性3人組に道を尋ねられた。彼らが目的とするのは、最近テレビやネットで取り上げられて話題沸騰中の人気のカフェ。地元ということもあり、流行りモノに疎い僕でも知っていた。
この道をまっすぐ行って、2つ目の小さな交差点を左に入ってすぐですよ。僕は丁寧に指を差して説明した。
「ああ、どうも」
最初に声をかけてきた男性が嬉しそうに笑いながら、僕に向かってぺこりと頭を下げた。
「どうも」
「どうもー」
残りの2人もにこにこしながらお辞儀をしてくれる。
が、ここで僕はちょっとした違和感を覚えたのだ。
3人の背中を見送りながら、僕は原因を探った。道を尋ねられたので、教えた。ここまでは何らおかしなところはない。僕の説明を聞いた彼らは、嬉しそうに「どうも」と言って──
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