カ=リナ

4/10
235人が本棚に入れています
本棚に追加
/1337ページ
 遅れてきた臣下は、まず国王に気づき、扉の前で顔が地につくほどに深々と平伏した。  そして、そのままの状態でありながら、その場にいる全員へ聞こえるように声を響かして言った。 「失礼いたします。――先刻ガ=リュウさまが、お戻りになられました」  その言葉を聞いた瞬間、わたしは見た。  嬉しさを隠し切れないように、相好を崩した王。  怯えるように顔を歪めた、わたしの愛する人。  変化のない日々を愛する彼は、義弟が帰ってくることで、不器用に生きてきたこの世界が、たちまちのうちに崩壊する恐怖を感じたのだ。  外見は国王である父親に似て、すっきりとした頬と顎の曲線を持ち、精悍な顔つきをしているだけあって、その狼狽は滑稽でもあった。
/1337ページ

最初のコメントを投稿しよう!