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遅れてきた臣下は、まず国王に気づき、扉の前で顔が地につくほどに深々と平伏した。
そして、そのままの状態でありながら、その場にいる全員へ聞こえるように声を響かして言った。
「失礼いたします。――先刻ガ=リュウさまが、お戻りになられました」
その言葉を聞いた瞬間、わたしは見た。
嬉しさを隠し切れないように、相好を崩した王。
怯えるように顔を歪めた、わたしの愛する人。
変化のない日々を愛する彼は、義弟が帰ってくることで、不器用に生きてきたこの世界が、たちまちのうちに崩壊する恐怖を感じたのだ。
外見は国王である父親に似て、すっきりとした頬と顎の曲線を持ち、精悍な顔つきをしているだけあって、その狼狽は滑稽でもあった。
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