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荒れる海にはもう用はないと背を向けた歳三に向け歩き出したところに、そんな問いを投げかけられる。まだやるべきことがあるのではないか。いや、やれることが山のようにあるはずだ。そう、強い眼光で捉えられる。しかし、歳三は首を振った。そして立ち止まって大鳥を見据えると
「俺の光はもう、消えちまったのさ」
ただそれだけ言って背を向けていた。もう呼び止める声はなく、ただ海辺の強い風だけが耳にこびりついていた。
その年の五月十一日。土方歳三は銃弾を受けてあっけなくこの世を去った。残された大鳥が思ったのは
「あなたにとって、新しい時代は光ではなかったんですね」
ただそれだけで。それは、とても悲しかった。
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