4−2

67/69
104人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
「まちや、どう云うことなんだ、」  混乱した顔で自分を見てくる木綿斗に、万知也は肩を(すく)めた。 「説明は後で良いか。腹が減って死にそうだ」  木綿斗は自分の腹を押さえた。「そういや俺もだ」 「俺も」 「私も。ひとまず帰って何か食べましょうか」 「おばあ様たちも、心配しているだろうな」  皆で揃って家へと帰る。万知也は肩の力を抜き、のんびりと歩いた。ああ、平和だ。  旺史郎の肩車から下りた縫以が、万知也の隣りに来て手を握ってくる。万知也もその手を握り返した。握りやすい手だなと、つくづく思う。 「まちやくん、どうもありがとう」 「俺は何もしていない。頑張ったのは、ぬいだ」  縫以の腕には猫のぬいぐるみがある。相変わらず能天気な顔をしている。あの犬は……狼は、帝都へ帰ったのだろうか。急にいろいろと文句を云いたい気分になった。きっと腹が空いているからだ。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!