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「まちや、どう云うことなんだ、」
混乱した顔で自分を見てくる木綿斗に、万知也は肩を竦めた。
「説明は後で良いか。腹が減って死にそうだ」
木綿斗は自分の腹を押さえた。「そういや俺もだ」
「俺も」
「私も。ひとまず帰って何か食べましょうか」
「おばあ様たちも、心配しているだろうな」
皆で揃って家へと帰る。万知也は肩の力を抜き、のんびりと歩いた。ああ、平和だ。
旺史郎の肩車から下りた縫以が、万知也の隣りに来て手を握ってくる。万知也もその手を握り返した。握りやすい手だなと、つくづく思う。
「まちやくん、どうもありがとう」
「俺は何もしていない。頑張ったのは、ぬいだ」
縫以の腕には猫のぬいぐるみがある。相変わらず能天気な顔をしている。あの犬は……狼は、帝都へ帰ったのだろうか。急にいろいろと文句を云いたい気分になった。きっと腹が空いているからだ。
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