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「万知也、嫁が来たぞ」
同級生の台詞に、万知也は盛大に顔をしかめた。
「その云い方は金輪際よしてくれ。あいつははとこだ」
丁重に、正確に、間違いを正す。だが相手は合点がいかないらしく、
「はとこって何だよ」
「又従姉妹だよ」
「又従姉妹って何だよ」
面倒になった。万知也は説明を放棄し、鞄を持って立ち上がる。教室の入り口の前に、美蘭乃がいた。頬のてっぺんを変に持ち上げて、笑う。何千何万回と練習済みの作り笑顔だな、と、万知也は思った。
「一緒に帰ろ」
「帰らない」
「どうして。方向一緒でしょ」
美蘭乃は腕をからませてくる。万知也はさっさと振りほどいた。そのまま見向きもせずに廊下を歩く。美蘭乃は小走りでついてきた。
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