1.平凡な男

1/1
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ

1.平凡な男

 俺は遠坂輪という。中肉中背、御年23歳の極めて平凡な男だ。  他人と違っているところを強いてあげれば、まず名前。おふくろが大好きだった少女マンガのキャラクターから拝借したそうだが、よく知らない。音読だけだと女性に間違われることがたまにある。正直めんどくさい。  それと、割と整った顔立ちのおかげか、よく見知らぬ男女に話しかけられる。半分は何かの勧誘(車でアンケートに協力すると1万円など)だが、唐突にメアドやLINERの交換を持ち掛けられることが3割。目的不明で胡散臭いのですべて断っている。  名刺やTEL番のメモを押し付けられることが1割。くれるものはもらう主義だが、お札じゃないのでいつもがっかりする。もちろん連絡はしない。あとは「付き合ってください」というストレートな要求だが、知らん人と何を話せばいいのかわからないので「はぁ?」といって立ち去る。実にうっとおしい。  変わっている点はそれくらい。入社一年目で「お前は人の気持ちがわからない」といわれて人事部から営業部に飛ばされたが、なんとかノルマはこなせている、ごく普通のサラリーマンだし。  健康そのものなので、ムラムラすればH動画もみるし、時には風俗店のお世話にもなる。お金が無い時はハッテン場へ繰り出して手や口でしたりされたりすることもある、本当にごく普通の、平凡な男だ。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!