お正月

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テレビでカウントダウンを始めた。 『5、4、3、2、1  明けましておめでとうございます!』 私たちは顔を見合わせる。 「明けましておめでとう」 「明けましておめでとう」 私たちは口を揃えて挨拶をした。 「じゃあ、行くか!」 立ち上がった賢吾に促されて、私も立つ。  コートを羽織り、私はその上からさらに賢吾にもらったストールを巻く。 ふふっ あたたかい。 賢吾に包まれてる錯覚を味わいながら、2人で初詣に向かう。 行き先は、保育園のある地元のお寺。 人はそれほど多くない。 お賽銭を投げ入れ、2人で手を合わせる。 お父さん、お母さん、私は元気に頑張ってるよ。 これからも頑張れるように応援しててね。 心の中で両親に語り掛ける。 私が顔を上げると、こちらを見る賢吾と目が合った。 「行こうか」 賢吾の声が優しい。 きっと賢吾は気付いてる。 私が両親に語り掛けてたこと。 だから、こんなに優しい。 「うん」 私は頷いてお御堂の急な階段をゆっくりと下りる。 すると、 「ほら」 と賢吾の手が伸びてきた。 「紗優美は、昔からこの階段  苦手だったもんな」 確かに、私は保育園の頃からこの階段が苦手だったけど…… これ、掴まれって言ってる?
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