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飛び散った破片は光を反射して落ちていく。 いつかKが飲み込んだ骨のかけらと同じように綺麗だと斎藤は思った。 「親の愛は無償だなんて幻想なんだね。兄さんがいてくれたからよかったけど手術できないんじゃないかと焦った。病気になってみんな離れていった。俺なにも悪い事してないのに。あっさりしたもんだね。でも」 頭を手でおさえながらこの世から遊離するようににふわりとMは立ち上がった。 「金があれば寄ってくる」 「わかったから、落ち着いてゆっくり座れ。いいか、座るんだ」 斎藤は揺れるMを見ながら刺激しないように手を伸ばす。専門知識はないが様子がおかしいのはわかる。 「救急車を呼ぶから、おとなしく座れ」 その声には反応せず、Mはすでに黄泉の国に足を踏み込んだような異形な表情をしていた。彼にはもう引き返す場所はない。 「もう遅いよ」 痛みに歪んだ表情で、座ったというより倒れ込んだという表現が正しいのか、Mの体が力なく崩れて転がった。 「おい!」 わずかの差で手が届かなかった。 「・・・ねえ拓海さん」 倒れるMをすくい取るように腕に抱える。弱々しい言葉にMの残された時間が少ないことを告げていた。 「俺レイに似てるでしょ?」 「似てるよ」 腕に埋もれるように顔をしかめて頭を抱えたMがいた。脳内で出血しているのかもしれない。相当な激痛が襲っているのが想像された。時間がない。 「お前が欲しいものは金じゃ手に入らないんだ。まわりの人間はな、離れたんじゃなくてどう接していいかわからず距離を置いただけだ。一度おろすぞ。動くなよ」 意識がなくなりそうなMをゆっくり離して立ち上がろうとしたが何かに引っ張られて体を戻された。 手を伸ばして、Mがネクタイを握っていた。 「レイに似てるなら・・・キスしてよ」 涙を流すMの顔がレイと重なる。ありきたりな綺麗事しか言わずレイに重ねて自分を見ている斎藤に 「偽善者」 そう言ってMの手はするりと床に落ちた。 斎藤は走り玄関に置いてあるカバンに手を突っ込んで携帯を取り出し急いで番号を押した。 「・・・殺してやる。俺と・・・一緒に地獄に」 遠くで救急車を要請している斎藤の言葉を聞きながらMは呪いの言葉を吐き続ける。 「・・・みんな死ね」
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