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佳境に入ってきた演劇部の稽古をブッチしてディズニーシーで丸一日遊んできた演出補の二人は、部員たちから羨望交じりの非難ごうごうの嵐を浴びた。
巳緒と彰は昼に部室に行って部員に平謝りでお土産を配り歩き、本番まで休みなし!と皆から厳命され、這う這うの体で逃げ出して芝生の広場に寝転がった。
「あー…参ったなあ。なんでこんなことになっちゃったんだ…」
「あと1カ月強、あたしたち休みなしよ…」
二人で空を見上げて嘆く。
「伊藤から昨夜LINEが来た。ありがとうってさ」
彰は苦々しげに言う。
「あ、そう。智香からは別に何もなかった」
巳緒は日差しの眩しさに目を瞑り、興味ないといったふうに呟く。
彰は身体を回転させて巳緒の方へ向き、肘を立てて頭を乗せた。
目を閉じている巳緒の顔を見下ろす。
「なんだよ、あのふたり付き合うことになったんだろ?」
「え、知らない。今朝も別に何も言ってなかったよ。
伊藤くん、例によってサボりだったし」
「訊かないのかよ?」
彰は驚いて言った。
昨日はすごく関心がある感じだったのに…
巳緒は目を開け、掌で日差しを避けながら彰の方へ顔を向けた。
「訊いたって、智香がちゃんと答えるか判らない。
はぐらかされて終わりってこともあるし。
あれで結構照れ屋だから。言いたくなったら言うでしょ」
はあ…女友達ってフクザツだなあ。
彰は呆れてまた寝転がり後頭部で手を組んで、抜けるように晴れた空を見上げた。
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