巳緒・彰 12‐1

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 佳境に入ってきた演劇部の稽古をブッチしてディズニーシーで丸一日遊んできた演出補の二人は、部員たちから羨望交じりの非難ごうごうの嵐を浴びた。    巳緒と彰は昼に部室に行って部員に平謝りでお土産を配り歩き、本番まで休みなし!と皆から厳命され、這う這うの体で逃げ出して芝生の広場に寝転がった。  「あー…参ったなあ。なんでこんなことになっちゃったんだ…」  「あと1カ月強、あたしたち休みなしよ…」  二人で空を見上げて嘆く。  「伊藤から昨夜LINEが来た。ありがとうってさ」  彰は苦々しげに言う。  「あ、そう。智香からは別に何もなかった」  巳緒は日差しの眩しさに目を瞑り、興味ないといったふうに呟く。    彰は身体を回転させて巳緒の方へ向き、肘を立てて頭を乗せた。  目を閉じている巳緒の顔を見下ろす。    「なんだよ、あのふたり付き合うことになったんだろ?」  「え、知らない。今朝も別に何も言ってなかったよ。  伊藤くん、例によってサボりだったし」  「訊かないのかよ?」  彰は驚いて言った。  昨日はすごく関心がある感じだったのに…  巳緒は目を開け、(てのひら)で日差しを避けながら彰の方へ顔を向けた。  「訊いたって、智香がちゃんと答えるか判らない。  はぐらかされて終わりってこともあるし。  あれで結構照れ屋だから。言いたくなったら言うでしょ」  はあ…女友達ってフクザツだなあ。  彰は呆れてまた寝転がり後頭部で手を組んで、抜けるように晴れた空を見上げた。
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