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 津山君の部屋に入った途端、どちらからともなく唇を重ね合う。 初めからもう、相手の中へと深く侵入することに違和感のない赤い粘膜は、味を感じる為の器官相応に、しっかりと私に甘さを伝えた。  不思議だ。  これまで深いキスは歯磨きをしないとできなかったのに、今はその時間さえ惜しい。  一旦唇が離れて、津山君が「先になにか飲むか食べる?」と聞いてくれたけど、離れていると寂しくて、彼の腕にすり寄った。  私の大好きな血管が見えて、たまらずにそこに口づけする。  すると彼は「我慢できなくなるじゃん」と呟くように言って、私の指を取り、蕩けてしまうんじゃないかと思うくらいに食んだ。  そこから少しずつ唇がずらされ、口元に還って、再びお互いに重ね合う。手が服にかかり、やがてじかに体温が伝わってきた。這うように動く手のひらの先の平たい指尖が、私の感覚を鋭くする。  二人の指も舌も、とても賢い。欲っするところに欲するまま動き、届いて……それはお互いの体の中心に、充分な蜜をあふれさせた。  津山君と繋がる。気持ちのままに体をぶつけ合う。  ねぇ、全然知らなかったよ? たがを外して求め、求められることが、こんなにも心を満たしてくれるだなんて。  私には初めてともいえる、まさにそのままの姿で愛し合う行為に、嫌悪感は少しもない。今まで顔をしかめていた相手の匂いや味を、幸せなものと感じる不思議。  好きって気持ちは、こんなにも尊いものなんだ。  動きを止め、繋がりを(ほど)いてからも、手のひらは名残を埋めるようにお互いの肌を撫でていた。
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