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プロローグ
――2020年1月
新学期が始まって間もない中央恵庭高校新聞部の部室では、2年生で部長の西崎みはると副部長の白井康永、そして先月入った1年生で新入部員の高柳佳奈の3人が、今月の壁新聞を作っていました。
「去年の卒業式の写真、優希先輩から来たメールに入ってない?」
「あ、ありました。これですね」
「そうそう、それを貼りつけてくれる?」
みはると康永がレイアウトを考えていく中、佳奈は記事づくり。
「『さ、く、ね、ん、の、そ、つ、ぎ、ょ、う、し、き、で、は』……、キーボードって使いづらいなぁ。フリック入力出来ればいいのに」
「最初はそうだけど、そのうち慣れるわよ。今のうちに覚えておけば後々役立つって優希先輩も言ってたし」
佳奈のグチをみはるがたしなめます。その時、
「ところで、さっきから気になってるんですが、優希先輩優希先輩って言ってますけど、どんな人なんですか?」
「そう、ねえ。とても素敵な人でね。一つ一つ親切に教えてくれて、でね、頼りがいもあって……」
顔を赤らめながら、みはるは佳奈と康永に、彼のこと、そして別れのことまで話してしまいました。
「今は東京の大学に彼女がいるみたいね」
と、少し寂しそうに語りました。それが思いもよらぬ事態を引き起こすとは、この時は知る由もありませんでした。
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