除幕

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除幕

「嶋田先輩、あの……」 「西崎さん? どうしたの?」  2019年春、新千歳空港は赤く染まる空の中を縫って、遠くへと旅立つ旅客機が次々と発着し、旅人たちが多く行き交っている。  この春で2年生になる中央恵庭高校新聞部部長の西崎みはるは、先日卒業した先代部長、嶋田優希の見送りに来ていた。彼は東京の大学に進学することが決まっていたので、しばらく会うことは出来ない。 「嶋田先輩、お世話になりました」 「こちらこそ。僕が居なくなっても、白井くんと一緒に頑張ってね。あと、新入部員の勧誘も」 「は、はい!」  この場には、もう一人の部員である同級生の白井康永は都合が悪くて来ていなかった。 ♪〜〜日本航空から、東京へご出発のお客様にご案内致します。東京、羽田空港行き518便をご利用のお客様は、搭乗口14番からご搭乗下さい。  無情な案内放送が、別れの時を告げた。みはるはこの日、優希先輩にどうしても告げたいことがあった。しかし…… 「それじゃ、そろそろ行くね。高柳さん、またね」 「あ、あの……」 「? どうしたの」  彼に言いたい言葉があった。しかしそれは彼女のもう一つの意思によってかき消された。 「いえ、なんでも……。東京でも頑張ってください!」  優希先輩も何か言いたげだが、言葉にしばし詰まったのち、 「うん……、頑張るよ」  それだけ言うと、彼は保安検査場へと姿を消した。みはるは静かに手を振って、見送ることしか出来なかった。いや、しなかった。  空港3階の展望スペースで、東京へと飛び立つ白く塗装された大きな旅客機を、みはるは静かに見送った。
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