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「すみませんでした。本当にすみません」
ベッドの上に正座して謝った。
杏子さんがクスリと笑った。
「反省してるならよろしい。はい、頭痛薬」
杏子さんが水と錠剤をくれた。
「いただきます」
錠剤を飲みながら前にもこんな事があったのを思い出した。
あれは矢島の結婚祝いで泥酔した時だった。
あの時、杏子さんは俺を連れ帰ってくれたんだ。それで憧れが本気の恋になって、一緒に生きたい人になった。
「優介くん、こう見えて私は一途なのよ」
ベッドの端に座って杏子さんが言った。
「えっ」
「私が一瀬さんの結婚相手を好きになる訳ないでしょ。私の目には優介君しか入ってないのよ」
ハッとした。昨夜、上村さんを好きになったら困るみたいな事を口走った気がする。
「夫を亡くして一年も経たないうちに、優介くんと暮らしてるのよ。それってかなり好きって事なのよ。私、そういう事するタイプじゃないんだから」
杏子さんが照れくさそうな笑みを浮かべた。
「不安になる事ないのに」
杏子さんが頭をなでなでしてくれた。
温かい気持ちが伝わった。
「優介くんの事、大好きなんだから」
キュンと胸に響いた。
愛されてるって心から感じる。
不安になる事なんて何もないんだ。
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