疑惑

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疑惑

10月になり、数日が過ぎた。 あれから妻の鬱病は落ち着いている。 いや、私に見せない所で隠しているだけなのかも知れない。 が、夜に爆発する事はなくなっていた。 子供は順調に育っている。 時々、熱を出したりしているが、アレルギーや好き嫌いもない。 妻も私も、育児をしながら家事を分担していた。 そんなある日、仕事中に妻から電話があった。 『もしもし、ちょっとお願いがあるんだけど。今日さ、夕方病院に行きたいんだけど、大丈夫?』 との事だった。 『大丈夫だけど、どうした?』 と、私が聞くと 『左後頭部が今日、異常に痛くてさ。さっきまで左足が痺れて、歩けなかったんだよね。吐き気もかなり激しいし、ちょっと嫌な予感がする』 と、妻は言っていた。 この日、妻は仕事で外出していた為、私は仕事が終わると、まず保育園へ子供を迎えに行った。 そのまま、車で30分ほど行った所にある駅まで妻を迎えに行った。 妻を乗せた時には、足の痺れは治まっており、頭痛も少し落ち着いていた。 吐き気は波があるようだ。 念の為に、車にはビニール袋を積んでいる。 妻を乗せて私は、いつもの病院へと向かった。 本当に救急外来があって良かったと、私は思う。 他の救急病院に行くと、カルテもないし、初期診断には色々と手間もかかるものである。 それが、かかりつけの病院だと、カルテもあるし、救急外来で来た事は主治医であるマリオにも伝わるだろう。 それにより、もし何か異常があった場合、治療がスムーズに出来る。 病院に着くと、妻は救急外来でCTを撮った。 私は子供と一緒に待合ロビーで撮影が終わるのを待つ。 そして、宿直の医師との問診に同席した。 結果として、妻のCTに異常は見つからなかった。 左後頭部の痛みは、肉体的、精神的ストレスによる頭痛の可能性があるとの事だった。 MRIではないが、CTで異常がないのであれば、脳腫瘍の再発ではないという事になる。 私と妻は一安心したのだが、心のどこかで検査に対して、どこか疑念をもっていた。 ひとまず、痛み止めと吐き気止めを処方してもらったので、それを受け取り、私達は帰宅した。
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