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(続きって何、また今度って、もうこういうのは止めてほしいのにぃ)
アオはそれを口に出せなかった。
去り際、敏感な場所を触られたせいでまた変な声が出そうになり、両手で口を押さえ必死に我慢していたからだ。
そんな真っ赤な顔と涙目でぷるぷる震える姿は、ある意味最凶――。
ちなみに早い時間だったため校内にいる生徒の数は少ない方だが皆無ではない。しかもここは生徒玄関口から入ってすぐの(一年と二年生が主に使う)階段付近だ。
ハッと思い出して視線を向ければ、赤い顔をした生徒たちが目をそらす。
(は、恥ずかし過ぎていたたまれない……っ)
アオは今なら自分の顔から火が出せるかもしれないと思った。
「だ、大丈夫かアオ君」
「(ごめんなさい大丈夫じゃないです)……はい。って、あの、鼻血出てますけど大丈夫ですか?」
「心配するなアオ君。この程度の鼻血、ティッシュでも詰めとけば何の問題もないさ」
「えーとあの、どうぞ。ハンカチですけど使ってください」
「むうっ。(ふぉおお、アオ君の匂いがついたハンカチ。なな何というお宝! まさかこの俺に永久保存の栄誉が与えられたのか? あああああ、至福の時至れりいいぃ)感謝す――ぶふぉッ」
「ひいいいいっ!?」
本来は寡黙で硬派な美形、だった筈の風紀副委員長。
その彼が鼻血を垂らしながら微笑んだ、かと思えば突然吐血した。いや、正確には両方の鼻穴から噴き出す血が大量すぎてまるで吐血したかのように見えただけだ。
なお、彼もまたアオが初恋相手。
つまり『幼なじみ』の一人である。
「失礼します副委員長!」
「アオさんはどうぞこちらへ。ああ、血がついてしまいましたね。うちの副委員長が大変なご迷惑をお掛けしました」
「えっ、あの。い、いいえ」
「申し訳ありません。髪の毛にも血が……どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「うぐぅッ」
どこからともなく現れたのは風紀委員たち。
てきぱきと二人を引き離し、アオの髪についた血を拭くことで、さり気なく副委員長の手から回収したハンカチを持ち主に返す。
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