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 康之と初めて話したのは、大学のゼミでの飲み会でだった。  スプモーニを飲んでいたところに、天然パーマが強めで前髪の長い男が座り、話しかけてきた。 「井沢さんって、いつも影を背負ってる感じだよね」  彼の名前をすぐに思い出せなかった。確か一年の時、必修英語で同じクラスだったような気はする。  一年の英語を受けていた時の印象では、割と成績が良かった印象がある。といっても世間ではせいぜい「中の上」のウチの大学レベルでの話だ。 「ほかの女子たちと違ってさ、一見、みんなと笑って会話しているように見えるけど、その実、みんなと距離を置いて、俯瞰した目線で見てる感じ」 「……で、影を背負っていたら何か問題でも?」 「いいなー、その返し方」  康之は何かに納得して腕組みして頷いた。 「普通の女子は、みんなと距離を置いているとか言ったら『そんなことないよー』『誤解だよー』って言うよ。井沢さんは認めちゃうし」  そんなに「普通の女子」を語れるほど、康之が多くの女子とつきあいがあるのか私にはわからなかった。 「それで、その影を背負っている私に何か?」 「オレ、井沢さんと友達になりたっくって。オレたち似てるところあると思うんだ」  同志とでも思われたのだろうか。長い前髪に半分隠れた彼の瞳はキラキラと輝いていた。よく見ると綺麗な顔にも見えたが、髪のボサボサ感や組み合わせが適当な服のバランスなどで、女子受けはしなさそうだった。 「井沢さんも本当はこの大学が第一志望だった人じゃないでしょ? なんか、わかるよ。もう少し上のレベル行けた人だなって」 「そう……かな?」  確かに、第一志望の大学ではなかった。ただ、そんなことをわざわざ周りには言っていないだけだった。 「オレもそうだから。もっと上を目指したい。入学に満足して遊び呆けてる奴らとは違う」 「貴方は……変わった人だね」  これが私と康之が最初に話した内容だった。
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