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両手をポケットの奥にずんと突っ込み、わざとズボンをずり下げる。しわの寄った裾をアスファルトでこすりながら埃まみれにして歩いて行く。足を踏み出す度に変なところでズボンにしわが曲がる。
通りのショーウィンドーに全身を映し出す。大通りをこんな小汚い格好で歩いているのは私くらいだ。紺の真新しいマフラーだけが浮いていた。
朝から何も食べていないので、むき出しになっているお腹はぺったんこ。身なりに無頓着な姿を周囲に晒すことで、私にとって女らしさなんてどうでもいいことだと宣言してみせたい気分でいっぱいだった。
虚しさで心が張り裂けそうだ。でもこの強烈な虚無感のせいで寒さを忘れられる。
私は汚れた髪の毛をわざと包帯のように斜めに撫で付けた。道ゆく人に誰でもいいから同情されたかったのかもしれない。
しかし通行人は誰も私に目を向けようとはしなかった。孤独を人目に晒そうとしても無駄なことだ。
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