アニオタゲーマーが勇者になったら

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アニオタゲーマーが勇者になったら

 ここはどこだ?  僕は自分の部屋で大好きなアニメのゲームをしていたはずだ。  ふと意識が飛んだと思ったら、知らない扉があったのだ。扉をを開けると――  周りを見渡してみる。そこには、知らない風景が広がっていた。おかしい……日本のいつもの風景とは違う。  そこは僕の大好きなアニメの世界と同じ風景だったのだ。  あまりにのめり込みすぎて夢でもみているのかもしれない。  でも、夢にしては妙にリアルで、風のにおいも木々のにおいもちゃんと感じるのだ。都会にはいまはほとんどなくなった土があって、土の感触もにおいもあるのだ。正直土に触るのは久しぶりだった。  おっと、自然を感じている場合ではない。  僕はこのアニメゲームの世界を熟知している。  だからどこに何があるとか誰がいるとか、たいていのことはわかるのだ。頭の中にある地図を頼りに歩いてみる。この世界は広い。  最近、あまり歩かない僕は久しぶりのウォーキングとなった。  自分の洋服を見下ろすとさっき着ていたトレーナーとスェットではなくなっていた。アニメゲームの主人公である勇者の格好に変身していた。  これはきっと夢だ。夢ならばとことん遊んでやろう。楽しまなければ損だ。こんなにリアルに体験できることなど滅多にない。  背中に剣を背負っているが運動不足の僕でも重く感じることなく歩くことができる。勇者だからだろうか? もやしっこの僕でもいくら歩いても疲れない。勇者だからだろうか? 勇者って最強じゃないのか?  森を進むと敵が現れた。雑魚キャラだ。こんなの僕の敵じゃない。勇者となった僕は剣で敵をどんどんやっつけた。現実世界でケンカをしたこともないし、武道もしたこともない僕が、こんなにあでやかに剣を扱えること自体、信じられないことだが……。――もしかして、僕は勇者になってしまったのだろうか?  僕は、ずっと疑問だった。勇者っていつも誰かにコントロールされていて、自分の意志が持てないことに不満じゃないのかって。だって、ゲームのキャラクターはプレイヤーによって命すら左右されるわけで、何かしら不満があるのではないかと思っていた。でも、今の俺は、意思があり自由がある。操り人形ではない。こんな勇者ならば、わりとアリだと思えた。だって、かっこいいじゃないか、見た目も装備も。  どうせ生きるのならば、現実よりバーチャルのほうがずっといい。だって、ゲームキャラクターは不老不死だからな。何度でもやり直すことが出きるし、何度でも生き返ることができる。それって最強じゃないか!
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