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誕生日に帰って来る父
「ママ、パパは何時に帰って来るの?」
その日は私の十一歳の誕生日だった。私は何度も玄関を覗きながら、その日何度目かの質問を母に投げかけていた。
「理紗・・まだよ」
私は父の帰宅を心待ちにしていた。父は一年の大半を海外で暮らしていて、年に数回しか帰国しない生活をもう十年近く続けていた。
だけど毎年私の誕生日には帰国して、プレゼントを両手一杯に抱えて帰宅してくれる。
そんな父と過ごす誕生日を私はいつも楽しみにしていた。
リビングのインターフォンが鳴った。
「パパだ!」
私はリビングを飛び出して玄関へ向かった。丁度、父が玄関のドアを開けた所だった。
私は父に飛び付いた。父が私をギューっと抱き締めてくれる。
「理紗! また大きくなったな!」
私は父のお腹に顔を埋めて大きく頷いた。
その日は母が用意した夕食とケーキが並ぶ食卓で三人で笑いながら過ごした。この時が私にとって最高に幸せな瞬間だった。
その翌年、十二歳の誕生日の前日。私は明日の父の帰国を心待ちにして自分の部屋で宿題をしていた。午後五時を回って母が私の部屋にやって来た。
「ママ、どうしたの?」
少し暗い表情を浮かべた母の口からは私が想像していなかった言葉が飛び出した。
「理紗・・。裕人さんは明日帰って来れないって・・」
私は椅子から飛び上がって母に詰め寄った。
「何で!? 私の誕生日なのに!!」
その時の私の失望は計り知れなかった。そして一ヶ月後、やっと帰国した父を怒った私は完全に無視してしまった。
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