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今日は、朝から佑ちゃんの部屋の大掃除をしている。来年の春には海外赴任する予定の、婚約者の佑ちゃん(榊祐介)。
私が愛してやまない、唯一の男性。
なのになのに、佑ちゃんは…、私(駒井沙都)を置いて、サウジアラビアに一人で行こうとしている。
なんでサウジなんだ〜!
因みに最近は、国名が長いのでサウジと呼ぶようになった。
これがアメリカとかフランスとかなら、きっと連れて行くと言ってくれたはずなのに…。
サウジって戒律とかいろいろ大変だって、佑ちゃんが言っていた。慣れない土地での私の苦労を心配して、連れて行ってもらえない!らしい。
私は本棚の整理をしている佑ちゃんを、恨めしげに見上げた。
「佑ちゃん、この荷物どうするの?」
「あぁ、サウジには持って行かないよ。
向こうで全部準備するから、本当に身の回りのものだけ持って行くつもりだよ。」
「じゃ、これとかこれは?」
私が気に入って買った、キャラクターのぬいぐるみを見せると、佑ちゃんは、
「持って行かない。」
くっそー、思い出の品なのに〜!
私はチッと舌打ちをした。
そんな私の様子を見た佑ちゃんは、
「いい歳した男が、ぬいぐるみなんか持って行かないに決まってるだろ?ふっ、バカだな。」
と、鼻で笑った。
ムキーッ!
そんな言い方、しなくてもいいじゃん!
「あぁ、そうですか!」
ボスッ!
私はゴミ箱に、ぬいぐるみを放り込んだ。
「待てっ!誰が捨てていいって言った?」
「はぁ?ぬいぐるみなんか捨てても問題ないでしょ? なんかって、今言った!」
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