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暑さと、熱さと、透也の視線とに縛られて、呼吸もままならない。その上……
「もう待てねぇわ……」
低く掠れた声で透也が言って、すぐに首の後ろを掴まれて噛みつくようにキスされる。
何もかも……何もかもぶっ壊す口付け……だって男が好きなはずはないのに、有り得ないくらい強く打つ鼓動が俺の欲望の先を教えてる。
そんな訳ない……そんな訳ないんだ……!
そう思いながらも、全力で拒絶出来ない。分かってるんだ……本当はこうされたかったってこと……だって唇が開いてる。深く入り込まれることを望んでる。
……いや、違う!今まで一度だって男をそう言う意味で好きになったことなんかない……!
何かの勘違いだ……!
あれだ……酔ってふざけてしたことが変な風に刷り込まれて……!
「もう……また泣いてんの?」
「泣いてねえっ」
とにかく情けなくて、涙声が裏っ返る。
正直に言えばキスを求める俺がいて、でも認めたくはなくて、それを制御出来てない自分が歯痒くて混乱して腹が立って……泣けた。
ふう、と透也がため息をつく。
「何か異議があります?」
唇が触れそうな距離のまま、透也が低く呟いた。
「俺は……そっちじゃ、ない……」
「そっち?あぁ、ゲイじゃないってこと。あのね、属性はこの際どうでもいいじゃん。
朔ちゃん、俺のこと好きでしょ?」
「好きだけど、違う……!俺は……友達として……」
なんかもう最後の足掻きというか……自分でも心のどこかでは正解を知っていたんじゃないかと思う。
「じゃあ朔ちゃん、友達とキスしたくなるの……?」
そう呟いて、今度は優しく宥めるようなキス。深くなっていくそれを受け入れ……やがては目を閉じ、応える。
トクトクトクと鼓動が教えるんだ。
『今まで』は知らない。
『他の男』を好きになったことなんかない。
でも『透也は』好きなんだと。
あぁ……
認めてしまえば、止められない。
暑さが熱さを煽って互いの唇にかかる吐息も熱っぽく、汗が額を、背中を流れ落ち、やがて昂りから背をまさぐる手がそれをシャツ越しに拭う。
「ね……朔ちゃん。恋人になって……」
透也が囁いて、俺の顎をそっと噛む。
熱に溺れそうになって仰け反った喉に唇が触れて……そしたら透也が「しょっぱ」って……少しの間を置いてふたりクスクス笑った。
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