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二回戦が終わったところでノノが飲み物を振る舞ってくれた。中野と日和亭にはアイスブラックを、ノノ自身はオレンジジュースを、七海は淹茶式で入れてもらった紅茶である。
好い茶葉を使ってあるのか香り高く、こんな場末の店にあるのはもったいないくらいの品である。
外はまだ雨が降っている様で、時折雷鳴のような音が唸っている。一息ついたところで、再開と相成った。
三回戦東一局、ドラ6。親は日和亭。
「ん……リーチ」
ここまでほとんど音沙汰無かった中野が、十巡目に7を切ってリーチを掛けて来た。捨て牌から見れば手なりの様である。
(リーチで東一局目からクビを切るのはあまり好ましくないはずなのに……待ちが好いか、役無しでドラドラ……といったところ?)
親の日和亭も一発消しをする事もなく、手出しで西を切り出した。七海は5をツモった。
一二四五六八九④④⑥⑦35 5
手は一通の形なのだが、入り目はどちらも偏張で、しかも危険牌筆頭のドラ表が二枚も手牌にある。
(ドラ表はいかにも切りにくい……手を広げ過ぎました)
普段ならもう少し手をスリムに構えるのだが、調子が上がって来た為に、つい手を膨らませてしまった。役無しでドラが多い手なのであれば、恐らくドラは対子以上で固定されているはずだ。例えば4566といった形は考えにくい。何故ならばロン和了りは期待出来ないからである。
あるとすれば、
七八九九九⑦⑧⑨666北北
こんな感じの、ドラは単独のメンツとして固定されており、読みにくい変則三面張となっているパターンである。これならばツモもロンも期待出来る。
(もし待ちが好いパターンの方だとすると、むしろリーチはせずに闇聴でツモ和了るはず……ならこれは通るはず)
七海は三枚見えている5の壁を利用して、ドラ筋の3を一発目に切った。
「……通し」
「一発目にドラ筋かいな。お嬢さんも勝負手か?」
日和亭が警戒している様にノノも安全運転しているらしく、日和亭に合わせて西を手出しで切った。
結局流局、中野を除く全員はノーテンであった。中野は手を開いた。
一二二三四①①①⑨⑨234
「ドラでも好形でもないリーチ?」
これにはさすがの七海も驚いた。
「7にくっ付けたかったけど、ニを引いちまった」
くっ付き聴牌の即リー、ロンで裏ドラ無しだとすると一三◯◯点にしかならない手である。
「罰符の方が高かったなぁ」
中野はリー棒を一本差し出した代わりに、差し引きニ◯◯◯点手に入れ、和了りも無しに全員のクビを切った。
その時七海を、歯面が磨り減ってバックラッシが大きくなってしまった歯車の噛み合わせが悪くなり、振動が大きくなってしまった様な感覚が襲った。
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