兄と旅行編 7 愛溢れる

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 自分の中にある恋愛感にはいつもどこか罪悪感が混ざってた。同性を好きなことを、ほんの僅かでも引け目に思っていた。自分の家族にも、相手の家族にも。  だから、好きになることを、いつもどこかで小さくだけれど謝っていた。セックスも、そう。だから、好きになるのをやめた。 「……ン、保、さんっ」  でも、今はさ。 「あっ……ンっ首のトコ、ちゅうしてもらうの、気持ちイイですっ」  変わったんだ。 「あ、ン、それ、好き、ですっ」  大事にしたい子がいる。好きだって伝えたくてたまらない子がいる。宝物みたいな子がいる。 「あぁ! そうだ! 保さん! キスマーク! お願いします! ここ! ほら! もうしばらくプールの授業もないので! ぜひ! 僕のここに!」 「…………っぷ」 「保さん?」  その大好きな子とセックスするのは、たまらなく気持ち良くて、あったかくて、優しくなれて、満たされるんだ。  そう、ものすごく満たされた気持ちになれる。 「いや、ごめん。浴衣でするっていうのに、そんなババーンと自分から肌蹴させるとは思いもしなかったから」  自分から浴衣の前、そんなにくつろげて、可愛い乳首を見せ付けるなんてこと、慶登くらいしかしないよ? 「! お色気、なかったですか? ご、ごめんなさい! 嬉しくてっ、つい」 「ううん。いいよ」  そんな君がたまらなく好きなんだ。 「可愛かった」 「あっンっ……ぁっ」  自分から切腹のごとく前をくつろげた慶登をゆっくり押し倒して、まだ引っ込んだままの乳首の横に、ご所望の赤い印をくっ付けた。 「やた……僕、これ、好きなんです。気持ちイイし、嬉しくなります」 「じゃあ、もっとたくさんつけてあげる」 「は……い」 「あっ……ン、ぁ、あぁ」 「下も触って欲しい?」 「は、ぃ」  たくさんしよう? 一緒にご飯を食べるみたいに楽しく、一緒にお風呂に入るみたいにあったかく、一緒に明日の話をしながらさ。 「たくさん、触ってください」  お色気なかったですか? って訊いたけど。お色気じゃなくて、色気だけど、そこはとりあえず置いといてさ。 「僕の乳首も、お尻も、たくさん、触って欲しいです」  ないわけないじゃん。色気。 「あぁっ……ン、かうぱ、また溢れちゃうっ」  好きな子が、抱き締めたいと押し倒したら嬉しそうにするんだよ? キスに蕩けて、柔らかく火照った舌を絡ませながら、名前を呼んでせがむんだ。 「あぁっ、保さん、らめっ、そこ、らめ」  アルコールに程よく浸った、トロトロな舌も、引っ込み思案で敏感なピンクの粒も、物欲しげに揺れる細い腰も。気持ちイイところを愛撫される度に俺の髪をくしゃくしゃに掻き混ぜる素直な白い指先も。 「あ、待って、くらさい」 「……慶登?」 「エッチなこと、したくなってくれて、嬉しい……です」  色気、ありすぎるに決ってる。 「えへへ」 「……慶登」 「あのっ、ふぇらちお、してもいいですか?」 「してくれるの?」  いかがわしいことだよね。年齢制限ばりばりの行為だ。隣に家族が寝泊りしている時にはちょっと気が引けちゃうくらい、今からすること全部、まるごと、けしからんことばかり。 「はい! します! もりもりとっ」 「じゃあ、是非、宜しくお願いします。もりもりと」  でも、その丸ごと全部がさ、愛しくてたまらない。 「ンっ、んぅ、む」 「っ」 「んんっ、ん、ぁふっ……ぁっ」  悪いことだけれど。 「慶、登」  とても優しくて幸せなことだって。 「ン、んっ、保、しゃ……ンの、おっき……くて」  慶登が教えてくれたんだ。 「ン、んむっ……ン」 「ごめん。慶登」 「ン、ぁふっ……ほへ?」  セックスは幸せに繋がってるって。 「いい? 慶登」 「! はい。ぜひ、あぁぁ! 待、待ってくださいっ」 「何?」  涎で濡れた唇を指で拭ってあげると、ふわふわの猫っ毛を揺らして、慶登が正座のまま飛び上がった。 「今日は、このままして欲しいです!」 「生で?」 「はい! たまにの、特別の日だと思いますっ!」  鼻の穴広げて、ふがふがさせながら、中出しをおねだりされた。普段はゴムをしてるんだ。愛しい恋人との行為は幸せだけれど、負担はかかるから。でも、たまに、特別な日だけは、そのまま慶登の中でイかせてもらう。  たまらなく気持ち良くてあったかい君の中で。 「じゃあ、俺も、ひとつ、おねだりしてもいい?」 「ほへ? なんですか?」 「敬語なし、がいい」 「えっ!」  そんなに驚かなくても、ってくらいに、元からまあるい瞳をもっと丸くさせて、慶登が頬を染めた。いつでも敬語で、それもまた可愛いんだけど。かなり、ぞっこんだからさ。 「ダメ?」 「うー……」 「慶登?」  タメ口でおしゃべりしてる慶登ってかなり珍しいんだよ。職場でも家でも、大野先生にも仁科先生にも、生徒にだって丁寧な言葉を使ってる。優しい言葉を選んでる。俺には膨れっ面も、拗ねた顔も、たくさん見せてくれるけれど、まだ、あれは見たことないんだ。君がお兄さんには見せる、無遠慮な感じ。  あれが欲しいなぁって、我儘だけれど思うんだ。 「たっ……保、っ、んと……」  家族に見せる、礼儀正しくない慶登もちょうだい? 「早く、ここに、挿れて……た、保、の、太いので、ここ、早くいっぱい気持ち良く、して?」  どうしようか。これ。 「いいよ、あげる」 「ぁ、ぁっ……大きい、よぉ、生の保の、ぁ、イっちゃいそ、熱いの」 「っ」  想像以上に可愛くて。 「やばっ」 「あ、あぁぁぁっ、僕もヤバイ、よぉ、ん、ぁ、保の、で」  中がきゅぅんと切なげに締め付けてるのに、君の中が、ところてんで射精してる最中なのに。 「あ、あ、あ、あっ、ずぶずぶされて、イっちゃっ……ん、また、イっちゃうってば、ぁ」  ごめんね。 「やぁぁっん、保の、大きいのっ」  加減できなさそうだ。 「あぁぁぁっん、あっン」  腰を使って、慶登の柔らかくなった中を擦り上げて、一番気持ちイイところをたくさん可愛がるのを止められない。敏感な身体は溢れる快感をもてあまして身悶えてるのに。 「ぁ、あっ、らめっ、保っ、ン、ぁ、あっ」  君が可愛いから止められない。 「あっ……ン、保も。気持ちイイ?」 「もちろん」 「じゃ、して、ね?」 「っ」  白い指が俺の頬を撫でて、華奢な腕で首にしっかりぶら下がった。 「僕の中でたくさん、してね?」 「っ」  大事な君を大事に抱き締めていたい。 「あ、あ、ああっ、ン、そこ、好きっ、好きっ」  宝物を扱うように、抱えて、独り占めしたい。 「やぁっン、ぁ、保っ、ン、保っ」  たくさん、しよう? 「あ、あ、あ、激しいのっ」  楽しく、あったかく、一緒に明日の話をしながらさ。 「ぁ、イくっ、も、出ちゃうっ」 「っ」 「ぁ、あ、あ、あああああああっ」 「っ」  愛溢れる時間を、一日一日を一緒に身体でくっつけて繋げよう。 「…………ぁ」 「っ、慶登」 「ン……保、大好き」  これからも、ずっと――。
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