クリスマスプレゼント

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  私は朝に弱いタイプの人間だ。 「はぁ〜疲れた・・・」  だからこうして朝食を食べ終わってからもリビングの机でダラダラとしてしまう。 「ほら、そんな所でぼさっとしてないで早く顔を洗ってきなさい。今日は講義があるんでしょ?遅刻するわよ」  台所で洗い物をしていた母が私を叱る。ただ、どれだけ体を奮い立たせようが、眠気には抗えないというものだ。 『それでは続いてのニュースです。今日未明、都内に住む無職の男性が逮捕されました。警察の調べによりますと男は数ヶ月にも渡って被害者の女子大生にしつこく付き纏ったり、洗濯物の衣類など数点を盗難した疑いが持たれています』  耳を澄ますと、テレビからそんなニュースが聞こえてきて、私は机に突っ伏したまま安堵した。 「あぁ〜そういや、アンタをストーキングしてた男も逮捕されたらしいわね!良かったわぁ〜。大きな被害が出る前に事が収まって」 「いやいや、私の服いっぱい取られてんじゃ〜ん。あん中にお気に入りのセーターとかスカートあったんだからね!はぁ〜・・・。マジで犯人キモイ」  外を歩く度に後ろを付け回されたり、干してあった服を盗まれたり。今、こうやって思い出すだけでも、ぞっとする事件だった。 「そういや、あの赤いマフラー。捨ててくれた?」 「あぁ、クリスマスに犯人から貰ったっていう、あの?捨てたけど、それがどうしたの?」  そっか。お母さんは知らないんだった。犯人から手渡されたプレゼントが怖すぎて、逆に捨てるに捨てれられず結局、開封してしまった時の私の恐怖を。 「あれさ。よくよく見たら私の服の素材で編まれたマフラーなんだよね」 「えっ・・・」  私もそう、だいたい今のお母さんみたいな反応だった。そういえば盗られた服、全部が私の好きな赤色だったなって考えたら、悲鳴すら出てこなくなって、体も動かせなくなって。  あの時はクリスマスの夜を共に過ごした友人がいたから、どうにか自我を保てたけど、1人だったら多分おかしくなってたと思う。  それくらい、アレは狂気に満ちたクリスマスプレゼントだった。
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