●第三章●

36/39
5837人が本棚に入れています
本棚に追加
/528ページ
さっきまで微笑んでいたお母さんの顔が、瞬時に強張り、そして目が泳ぐ。 「そ、そんなことを聞いてどうするの……?!」 「だって気になるもの。告白とかしたの? どっちから?」 「そ、それは……」 今までこんな機会はなかったから私の好奇心は止まらず、矢継ぎ早に質問を繰り出してしまう。 「初めてのデートは?」「お父さんのどこに惹かれたの?」「やっぱりプロポーズはお父さんから? どこでどんなふうに?」そう質問する私にお母さんは「あっ……えっと、その……」しか答えてくれない。 そんな中、扉の向こうではお父さんの軽い笑い声が聞こえた気がした。 「もう! あなたったら聞こえているのなら助けてくれてもいいじゃない!」 怒ったお母さんは立ち上がり、扉を勢いよく開ける。 そこにはお父さんが腕組みをしながら口に手を当て、上がる口角を誤魔化している。
/528ページ

最初のコメントを投稿しよう!