●第三章●

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お母さんは遠くを見るような目をして、ため息をつきながら私の手を握った。 なんだかお母さんもそういう経験をしてきたのかと思ってしまいそうになるくらい、説得力がある声色だった。 「でも、流されちゃダメよ。自分をもっと大事にしなさい。そして、周りの人もよく見て。あなたのことを誰よりも大事に思ってくれている人は、結愛が思っている以上にそばにいるわ。私も今まで美子にはいつも助けられてきたもの」 美子さんとお母さんは私と蓮と同じ様に、小さい頃からずっと一緒の幼馴染だ。 私も蓮にはずっと助けてもらっている。 だから、お母さんの言うことに心の底から納得した。 「……うん、わかった。ちゃんと考える……淳さんとこれからどうすればいいのか」 「わかってくれてありがとう。お母さんから言いたかったのはそれだけよ」 満足気になったお母さんは、いつもの優しい笑顔に戻った。 その顔にホッとして、私はつい気になったことを口走ってしまう。 「ねぇ、お母さん」 「んっ? なに?」 「お父さんとお母さんってどうして結婚したの? そういえば今まで聞いたことなかったなって」 「えっ……!」
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