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お千代は多恵子のマンションで一人こもっていた。
時折辛そうにしくしく泣きながらスマホをいじっていた。
天気予報で雷の来る日を検索していた。
現在の町の風景は変わっても遠くにある山の形は
あの頃と同じだった。
「あの山のふもとにあたいの小屋があったんだ、飢えて
冬は凍え死にそうで辛かったけど、子供の頃は
楽しかった事しか覚えてないんだよね、その中に昭介がいる、
一番楽しかった」
笑顔を見せて二人に話すお千代を見るのが辛かった。
豪雨と雷がこの地にやって来るのは一週間後らしい。
「お千代ちゃん、どうしても行くなら僕らは何も言わない、
本当は是が非でも引き止めたいんだけどね、
だから最後に思い出作らないか?お千代ちゃんの好きな食べ物
ハンバーグだったよね、みんなで食べに行こう、学校の友達が
レストランでバイトやってるから安くしてもらえるし」
「ハンバーグあたい大好き!あんな美味しい食べ物
生まれて初めてだった、また食べたい」
笑顔になったお千代に少し安心する二人だった。
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