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八月、日本全国で夏祭りが行われる頃、
白石多恵子が住む地方の小さな町も祭りで盛り上がっていた。
広場に集まって輪になって踊る盆踊りを眺めながら
ボーっとしていた。
若い男女が楽しそうにはしゃいでいる姿、
多恵子と知り合いの男から声を掛けられても
反応を示さなかった。
別に嫌いなわけじゃない、
ただ人を見ているだけだった。
多恵子も祭りのために古着屋で買った浴衣を着ていた。
淡いピンクと水色であじさいの模様があった。
輪の中に入って一緒に踊ろうか、と思ったが、
楽しければますます心が沈んでいく事を
多恵子は知っていた。
長い間多恵子は踊りを見ていたが、
急に空がゴロゴロと鳴り出し雨が降ってきた。
雨は大雨となり踊りの輪が崩れ、みんな避難し始めた。
そこへ眩しい閃光と供に広場の近くの大木に
カミナリが落ちた。
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