321人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
ふたりで撤収作業をし、両隣の作家に挨拶をして、会場を離れた。
荷物は、車があるので、帰りは宅配搬出をせず、持って帰ることにした。
私の代わりにスーツケースを引きながら、柏木さんが先にホールを出ると、ふと海辺の方へ目を向け、
「弥生さん。見てください。イルミネーションが綺麗ですよ」
と指を差した。ATCの建物の向こう、海辺側に、大きなクリスマスツリーが飾られている。
「本当ですね」
そういえば今日はクリスマスイブだった、と思い出し、頷くと、
「少し見て行きませんか?」
柏木さんに誘われ、私はもう一度「はい」と頷いた。柏木さんと連れ立ってツリーの元まで歩いて行く。
クリスマスツリーの下まで来ると、私は上を見上げ、
「わあ!本当に綺麗ですね」
と感嘆の吐息をついた。今、ここで、柏木さんとクリスマスツリーを眺めていられることを不思議に思い、と同時に感謝をする。
私の隣に立つ柏木さんの横顔を見て、
(ああ、私、やっぱりこの人のことが好き)
あらためて思った。
最初のコメントを投稿しよう!