【4】

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 やんわりとではあるが、半ば脅迫じみた誘いを受け、何度か飲みに行くようになって早数カ月。今ではすっかり常連となった居酒屋で、筧はいつものようにスーツのネクタイを緩めた。  気づけば、隔週で週末の夜はこの君島と過ごしている。  全く、職場で四六時中一緒にいるというのに、週末までこいつと一緒とかマジで勘弁……と思ったが、それほど苦痛というわけではないことに気づいたこの頃。 「今夜、筧さんとこ泊めてくださいよ」 「はぁ!? 嫌だよ。近いんだから自分家帰れや。それに、おまえ泊めたの会社のヤツにバレてみろ、変な噂立つだろうが」 「何言ってんすか。んなわけないでしょ」 「おまえ相手だと冗談にならないんだよ」  それはこの君島が社内でゲイを公言しているから。 「おまえがやたら纏わりつくからだなー! 最近、女の子らに『君島くんとつきあってるんですか!?』とか言われんだよ。……マジ、勘弁しろって!」  筧は勢いよくジョッキをテーブルに置いて泡の付いた口元を拭った。 「面倒だから認めちゃえば?」  手にした枝豆を口に付けて君島がニヤと笑う。 「アホか。おまえみたいなイケメンは何言っても敵ナシかもしんねーけどな。俺みたいな冴えない人間は違うんだよ。それで仕事に支障出るとか考えただけで死にたくなる」  そうだ。いままで必死で培ってきたもの。  仕事にしろ、人間関係にしろ。今更それを崩されて堪るか。
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