残響は白く

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残響は白く

「おい!どうしたタクヤ。オーディエンスが待ってるぞ」  そう言って来たのはドラムの睦だった。熱狂と興奮の残留するライブハウス、そのステージ上でタクヤは最後の曲を言う直前に意識は真っ白になって立ち尽くしていた。  客席から”頑張って!”という声や”ありがとう!”という声が入り混じっていた。  オーディエンスはどうやら、自分が感傷に浸って最後のライブと言う事もあり気持ちの高ぶりで立ち止まっているのだと感じた様である。  実際どうして一瞬意識が無くなったのか解らなかったが、もしかするとそうなのかも知れないと思いつつ、最後の曲の準備をメンバーたちが用意出来たのかを確認しながら、水を一口だけ口に含みゆっくりと喉に通した。  マイクスタンド前にやって来ると、俯いたまま神経を集中させる。  聞こえて来ていた歓声が集中力の高まりと共に、意識が沈み込むかのように聞こえなくなっていく。自分自身の声に聞き耳を立てる用意しながら大きく息を吸い込んだ。  やがてその姿を目にしたオーディエンスも熱狂を抑える様に騒がしい声もなくなりライブハウス内が一瞬、静まり返った瞬間にタクヤの声が響き渡った。
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