濤 参

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 十二月、一足先に心晴は推薦入試で合格を決めた。受験から解放された心晴と俺の間には、ますます溝が空いた。  心晴は俺に会いたがってくれるけど、正直そんな余裕はない。俺の頭じゃ命がけで勉強しないと受かんないようなとこ受けるんだよ。わかってくれよ、心晴―― 「ねぇ、せめてクリスマスにイルミネーションくらい見に行こう!」  休憩時間に机に突っ伏して寝ていると、心晴が声をかけて来た。 「クリスマス?」  塾の予定を思い出す。その日はちょうど授業が少なかったはずだ――いつもほったらかしにしてるから、それくらいは聞いてやらないといけない気がして俺は頷く。 「近場でいいなら」 「今年は平和大通りでいいよ! じゃぁ楽しみにしてる!」  軽快に手を振って帰る心晴のことが、少しうらやましかった。受験から解放されるって、どんな感じだろうな――
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