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今、私達が立っているこの場所は、私の祖父が一番愛した場所だった。 ボートに乗らなくても、行ける唯一の美しい湖畔。
祖父は幼い私をおぶってここまでの道を歩いてくれた。
もちろん、私のおじいちゃんが愛しているという事は、専務のおじいちゃんだって大のお気に入りの場所。
そして、専務が子供の時に私の祖父にプレゼントした風景画は、まさにここから見える壮大なまんだら湖の絵だった。
だから、お父さんがこだわってしまうのも分かる。
おじいちゃん達の大好きだった場所で、私と専務の幸せなツーショットを撮りたいと思っている。
それは分かるんだけど…
すると、途中から参加していた町の写真館の内藤さんが素晴らしいフォローをしてくれた。
「竹内さん、さっき撮ってたショットの中ですごくいいのがあったよね?
あれを超える写真はもうないと思うよ」
内藤さんはさっきの休憩の間に、お父さんの撮った画像のデータをチェックしていたらしく、その中で光の加減も二人の表情も後ろに映るまんだら湖の水の色も最高なものがあったと言う。
内藤さん! もっと言って、お願い!
私は心の中でそう叫んだ。
隣に座り込んでいる専務は、時差ボケのせいかもうお眠の時間に突入する勢いだ。
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