黒王子の受難は幸せの証し??

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「そうよ、あなた。どこかで区切りを付けなきゃ。  もう、お開きにしましょうよ」  お母さんは私にコートを着せて、専務に温かいコーヒーの入ったポットを渡す。 「龍くんだって、疲れたわよね。  可哀そうに、目もくぼんじゃって」  お母さんの優しい言葉に専務はまた涙目になっている。  もはや、魂の抜けた大魔王の抜け殻みたいに…  お父さんは決心をしたのか、空を見上げ深呼吸をした。 「よし、分かった!  じゃ、最後の一枚を撮って終了としよう」  お父さんはそう言うと、湖畔が一番美しく見える場所に、折り畳みの椅子を並べ始めた。ここにいる全員と記念写真を撮りたいらしい。  四個を横並びに並べた椅子の真ん中に私と専務を座らせる。  そして、お母さんやギャラリーのお客様をお父さんの指図で後ろへ立たせた。 「内藤さん、撮ってもらっていいですか?」  お父さんはそう言って、内藤さんにカメラを託し自分も私達の後ろへ立った。 「え? お父さんとお母さん、ここに座るんじゃないの?  私達の横の椅子が空いてるよ」  専務もキョトンとした顔で、隣の空いている椅子に目をやった。  私の横と専務の横に誰も座らない椅子だけが置いてある。 「そこはそのままでいいんだ。  そこには、きっと、ほとりのおじいちゃんと龍くんのおじいちゃんが座ってるはずだから。  この場所でこんな事をやってるんだ。  見に来てないわけはないだろう?」
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