ボーナストラック_幕舎の中で

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ボーナストラック_幕舎の中で

ストリング城が空へと()かぶ前――。 そこから、かなり(はな)れた反帝国組織(はんていこくそしき)バイオナンバーの野営地(やえいち)。 その陣地内(じんちない)には、多くの幕舎(ばくしゃ)(なら)んでいる。 その中の1つに、一際(ひときわ)明るい声が聞こえてくるものがあった。 軍幕内(ぐんまくない)には、坊主頭(ぼうずあたま)の男性と、銀髪(ぎんぱつ)の女性が仲睦(なかむつ)まじく笑い合っている。 2人はバイオナンバーの兵士であるブラッドとエヌエー。 シックスと同じく、バイオナンバーを結成(けっせい)したリーダーのバイオに、子供の(ころ)(ひろ)われた、いわば彼の(おさ)なじみである。 ブラッドとエヌエーは何が楽しくて笑い合っているのか? それは、シックスがキャスとマナと共に反帝国組織(バイオナンバー)の野営地を出てからしばらくして、ようやく来た連絡(れんらく)について話していたからだ。 シックスはストリング帝国にあった(ふる)電波回線(でんぱかいせん)を使って、アンの暴走(ぼうそう)を止めたことや、今一緒にいる仲間たちについて、2人へ(つた)えたのだった。 ブラッドもエヌエーも、アンやシックスたちが無事(ぶじ)なことを(よろこ)び、さらに聞いた新しい仲間の話――クロム·グラッドスト―ンとルドベキア·ヴェイス、そして、電気仕掛(じか)けの黒子羊(こひつじ)ルーの話題(わだい)()り上がっていた。 しばらくして、軍幕の出入口が開かれ、中へ人影(ひとかげ)が入って来る。 そこには、以前にシックスを処刑(しょけい)しようとしたメディスンの姿があった(今の彼はもうそのことを反省(はんせい)し、生まれ変わったように組織のために(はたら)いている)。 ブラッドとエヌエーは、早速(さっそく)さっきの話題をメディスンへ()った。 クロムという少年は、大人の背丈(せたけ)よりも高く大きなハンマーを使い、さらには大地(だいち)(あやつ)能力(のうりょく)がある。 マナは火、キャスは水、シックスは風、そしてクロムは土なんて、これは何か運命(うんめい)なのではないかとはしゃぎながら言う2人に、メディスンは落ち着くように言葉を返していた。 だが、2人はとても(おさ)まらず、次にルドベキアとル―の話を続ける。 雪の大陸にあったガーベラドームの(わか)き王――ルドベキア·ヴェイス。 彼の存在(そんざい)は、ブラッドもエヌエー、そしてメディスンも反帝国組織(バイオ·ナンバー)のメンバーなら誰でも知っていた。 だからメディスンは、ルドベキアがシックスと繋がったことを喜んでいるものかと思っていたが――。 「(ちが)う違う。それはもちろん(うれ)しいことなんだけど」 エヌエーが笑顔で右手を振った。 2人が()り上がっている理由は、ルドベキアが仲間にいることではなく、どうやら彼はアンのことが好きらしいと聞いたからだった。 それを聞いたメディスンは、ため息をつくと、どうでもよさそうに言う。 「おい、シックスはアンの奴が好きだったんじゃないのか? それなのに何故喜んでいるんだお前たちは?」 それを聞いたブラッドとエヌエーは顔をしかめた。 その表情(ひょうじょう)は「何を言っているんだお前は?」とでも言いたそうだ。 「おいおい、シックスはキャスだろ?」 「そうよ。2人を見ていてわからなかったの?」 一斉(いっせい)に突っかかってくる2人に、メディスンはもう辟易(へきえき)していた。 この幼なじみカップルは、こういう話が(むかし)から大好きなのだ。 そして、また話題は飛び、黒子羊ルーのことに――。 エヌエーは、ルーがニコと同型のロボットであると聞いて、2匹を(なら)べて写真(しゃしん)を取ったり、その体を(おお)ている(ゆた)かな毛に()れたいと声を()り上げていた。 それは、ブラッドも同じだった。 エヌエーに負けないくらいの声で、ニコとルーを抱きしめたいと(さけ)んでいる。 そんな2人を見たメディスンは、この軍幕に入ってから2回目のため息をついた。 このカップルは、(こい)の話だけではなく動物も共通(きょうつう)で好きなのだ。 そして、ブラッドとエヌエーはストリング帝国との戦争が落ち着いたら、全員で(あつ)まろうと話し始めた。 そのときには――。 エヌエーは、得意(とくい)料理である砂鰐(サンド·アリゲーター)唐揚(からあ)げを――。 マナも得意の(にわとり)料理を――。 クロムには、シックスから聞いた白鹿(ホワイト·レインディア)の乳から作ったチーズを――。 他にも色々(いろいろ)用意(ようい)してパーティーをやりたいと盛り上がり続けた。 「あ~次にアンたちに会うのが楽しみだね」 「そうだな。早く戦争が終わればないいな~」 今までずっと呆れていたメディスンだったが、その顔はいつの()にか笑顔になっていた。
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