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夏生くんが、涙が浮かぶ瞳で私の瞳を覗き込む。
「……小雪、前も同じこと聞いたよな。1年7組の教室で」
それは、出会って間もない頃。
何気なく聞いた、あの質問。
『夏生くんも、願いごとがあるからここにいるの?』
あの日の夏生くんは、はぐらかすように「桜が綺麗だから」と答えた。
「本当に、なかったんだ。願いなんて、そんなもの無駄だったから」
ポタポタと、白いシーツに涙が落ちる。
これが私のものなのか彼のものなのか、もう分からない。
「でも、小雪に出会った。いつ終わるかわからない俺の願いなんて、意味がないのに。毎日、待ってたんだ。小雪が、うるさい音を立てて1年7組に来るのを」
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