①ー出会いー

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①ー出会いー

※お手に取って頂き、ありがとうございます。  初めに、  本作は、間合いの具合や強調等を  表現するため、  普通ではない方法を多用していると思います。  普通じゃない小説があったっていいだろう、  と思って下さる方に、お読み頂けたらと思います。  どうぞ宜しくお願い致します。  『この世界は、私に優しくない。』   あの人と出会ったのは、   大学3年の、春だった。 ぼんやりした 重い頭で、 駅へ、歩いていたとき。  「――――すみません。」  ふっと、後ろから、  男性の声が、して。 その、次の瞬間には、 顔を、覗き込まれていて。 穏やかな表情の、 若い男性の顔が、映った。 「これ、落としましたよ。」 彼は、そう言って、 私が、コートのポケットに入れていた、 ティッシュを、向けてきた。 私は、 その、 知らない、大学生であろう男性に 話しかけられて。 心臓が、少し、 震えながら。 すぐに視線を、 彼の顔から、下へと、ずらした。 「…ありがとう、ございます。」 そして、 マスク越しに言葉を返して、 それを受け取り。 そのまま、頭を下げ。 また、前へ踏み出そうとした、 そのとき。 「……あの。  …さっき、  大学の、  ――メンタルヘルス相談室、  行ってましたよね?」  不意に  そう言葉が、投げられ。  私は、  思わず、足を止め、  彼へ、顔を向けてしまった。 「俺は健康診断で、  たまたまそれを見かけて…。」 彼は変わらず、 穏やかな表情で、話し続け。 「…実は俺、  カウンセラー目指してて。  それで、  メンタル系の研究やりたいと  思ってて。」 「…良かったら、  どんな話してた…とか、  聞かせてくれませんか?」  私の目を見て、発した。 私は、 そう、穏やかに話す、彼の顔を、 ぼんやりする目で、眺め。 「…駅のファミレスとかで。  お代は、俺が出しますから。」 彼の言葉を、 ぼんやりする頭で、 薄く、考えて。 …まあ、  ……どうでもいいか  と、思って。 「……絶対に他言しないという、  誓約書を書いて頂けるのなら。」 そう、こもった声で、答えた。 「もちろんです。」 彼は、穏やかに頷き。 「じゃあ、行きましょうか。」 そう、私に声をかけてから、 ファミレスへ、足を向け。 私は、彼から、 3歩ぐらいの距離を空けて、 その後ろを、ついて行った。
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