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昨日さ、せっかくだから楽しむって言ったけど…
「うッッわ!! めっちゃ不審者じゃん!」
「可愛い子期待したのにただの変質者とか…」
「不審者とかマジ萎えるんですけどぉ」
「王道じゃなくて不審者!? 非王道!?」
樹華野湖学園とそう変わらない件について。
「はいはーい静かにー。それじゃあ自己紹介どうぞー」
「あっはい。香坂 綾人です」
「はーい、香坂くんの席はあそこのずっと鏡見てる子の隣だよ。はい、じゃ俺もう行くなー」
2-Aの担任はそれだけ言うとばいばーい。と緩く手を振りながら教室を出て行った。
ちょくちょ歩く道に出される足の上履きをいちいち脱がして投げる。
を繰り返していると、いつの間にか席に到着。
軽く汚れてしまった手を払い、恐らく隣の席になる手鏡ばっか見ている…何故だか既視感のある奴に軽く挨拶でもしようと、その肩に手を置いた。
「俺は香坂 綾人。よろし───」
「あぁ、僕は如月───」
「「ッだあぁぁああぁあ!!?」」
「な、なっなんで貴様がここに!! まさか僕と同じくスパイしに来…───」
「おっ、おー、おー、奏!! ひっさしぶりだなぁ!! 昼頃にゆっくり話そうな!」
「む、むぐぅ」
慌てて両手で塞ぎながらそう言えば、息が出来なくて苦しいのか首をこくこくと勢いよく振った。
◇
「香坂…いや、あっ、あ、綾人! 何故貴様がここにいるんだ」
当然、隣の奏に教科書を見てせ貰いつつ受けた授業は一文字も脳みそには入ってこなかった。
そしてそんな地獄のような授業を終え、今は食堂で昼食タイム。
チャーハンをもちゃもちゃ食べつつ、ジト目気味の奏に自然と明後日の方向に視線が行った。
ちなみに勢いで奏と言ってしまった事を謝ったら、そのままでいいと言われてたのでお言葉に甘えて下の名前で呼んでる。
「…気分転換?」
遥太に気を取られすぎてここに奏が居るの見落としてたわ。
流石にこの嘘は通用しねーか、と恐る恐る奏を見てみると顎に手を置きふむ、と一つ頷いた。
「なるほど」
「ぶぐッ…!! げほげほッ、!!」
「だ、大丈夫か!!」
騙されんのかい!!
コイツ疑うのうの字すらも知らねーんじゃねぇの…本気で心配になってきた…。
ギャァァァァァ!!!!
そして唐突として巻き起こる歓声という名の悲鳴。
アッチで慣れすぎた俺は特にあの時のように顔を顰めることはなかったが、不意に呟いた奏の言葉に首を傾げる事になった。
「なんだ、アイツらが来たんだな」
「アイツら?」
奏は食べるのをやめ、レンゲを置いた。
「生徒会役員だ。あぁ、ちなみに僕も役員だ」
「へーそうか。帰ってもいいか?」
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