静夜の甘く危険な日常

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  「……っ、……っ……っく……は……っ」  声は、無い。  僕の熱い吐息だけが、地下室に溢れる。  首と。  両手、両足首を、金属の鎖の先に、黒の合成革がついた拘束具で、大の字型の診察台に縛り付けられた挙句。  口一杯に、球状の口輪、ボール・ギャグをはめられて、声すら立てるコトが出来ない状況だったけど、いつものことだ。  別に、たいしたことじゃない。  僕は修理屋の師匠であるドクター・ルアの僕自身の身体を使って、その仕組みについて理解する『授業』を受けていただけだ。  昔、って言うにはまだ最近過ぎる、ちょっと前の記憶を僕は、思いだしていた。  白衣を着たルアが、端正な顔を欲望に歪めることなく、僕のカラダに触れて『講義』する。  ルアは、他の機械学の時と同じように、僕に淡々と様々な事を教えてくれているだけなのに。  手の触感で生まれた、湧きあがる性欲を、苦しいほど鮮明に感じながら、僕が勝手に悶えている。 「……それで。ここが『前立腺』だね」  ぬぷり  ローションをたっぷり垂らされた後孔に、ルアの長い指が卑猥な音を立てて入って来る。  それは、たった一本だけのことだったのに。  本当は、排泄にしか使わないはずの場所から、入って来るわずかな痛みと膨大な違和感に、僕は、声を封じられたまま、叫び声を上げていた。 「……っ! ……っ!!」  直腸を這いあがってくる感覚が、怖い。  反射的に、ルアの手を引き抜こうとして、僕の両手は、ガシャリ、と重い鎖に阻まれた。  そんな僕の様子を見て、ルアは、薄く笑う。 「……なんだ、静夜。怖いの?  目を見開いちゃって、可愛い。  ちょっと涙滲んでるけど、大丈夫だよね?  君は処女ってわけじゃないし」  そして、ルアは、僕の耳元に息を吹きかけるように言った。 「……散々、男を誘った淫乱で汚い穴。  アナルの周りには、たっぷりローション垂らしたし。  きちんと、もみほぐさなくても、僕の指くらい、余裕で咥えられるよね?」  そうつぶやきながら、ルアは、指を曲げ、ずっと前立腺だそうな、その場所をマッサージしている。  つりつりつりと、薄皮を隔てたソコに触れるたび。  じんわりとやるせない快感がたまってゆくのが判る。
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