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証明写真は撮らせない!
あら、どうもこんにちは。私、幽霊やってます。まだ若いのよ、なんといっても二十代前半で死んだ時のままの姿だからね!
まあ、その後ウン十年幽霊やってるから実年齢?はアレなんだけど。
私が地縛霊やってる理由はただ一つ!
今私の隣にある、証明写真ボックス!これよ!
当時は、履歴書は全部手書きで出すのがデフォルトで、履歴書に貼り付ける写真は高いお金出して証明写真ボックスで撮影しないといけなかったわけ。私はその写真を撮り忘れていることに気づいて、履歴書の提出締め切り直前に慌ててこのボックスに駆け込んだのよ。
そしたらなんと!そのタイミングで長蛇の列!
焦れにじれてやっと私の番が来たかと思ったらそのタイミングでボタンが陥没しやがってぶっ壊れる!こんな不運なことってある!?
結局私は証明写真を撮ることができずに、履歴書の書類選考で落とされちゃって……それがあんまりにも悔しかった私はヤケ酒飲んでよっぱらって線路に落下!お陀仏しちゃったわけよ。こんな理不尽なことないわよ!
結果、この忌々しい証明写真ボックスの隣で地縛霊やることになっちゃったわけ。
ふふふ、このボックスは誰にも使わせないわ。履歴書の写真取りに来た就活生は特に!全員写真の邪魔して、就職活動の邪魔をし続けてやるわ。今の私は、とにかく“証明写真を撮らせない”ことだけが生きがいの女なのよ!まあもう死んでるのに生きがいで正しいのかどうかは知らんけども!!
おっと、来たわね新しい生贄が。可愛い男の子じゃないの。ふふ、私がどう邪魔するのか見せてあげるわ。いい?
「ぎゃあああああああああ!」
おーほっほっほ!ざまあないわね、必殺、私の“ジャイ●ンリサイタル”が聞いたようで何より!
ふふ、子供の頃から“カラオケ大量破壊兵器”と呼ばれて恐れられた私の歌声よ、とくと味わいなさい。一度聴いたら三日は頭痛に悩まされると大評判だったんだから!ちょっと切ないけど!
あらら?可哀想にね、またひとり私の餌食になりたい人が来たようね。今度は女の子だわ。次はそうね……こうしてあげる!
「なななな何!?ボックスが、ボックスが揺れ……きゃああああああ!」
撮り始めると同時にボックスががっくんがっくん揺れまくる!リアルポルターガイストのお味はどう?楽しいでしょ?あはは、泣きながら飛び出していったわ。写真撮るどころじゃないものね。
他にもいろいろ嫌がらせ方法はあるわよ。言い忘れてたけど、ここ駅の構内なの。大きいけど結構ボロい駅だから、その気になればブラックGも某猫型ロボットが大嫌いなアレも調達し放題ってわけ。ここまで言えば、何をするのかわかるわよね?
成仏なんかしてやるもんですか。延々にこの場所で、証明写真を撮影しようとする愚かな連中どもの妨害をし続けてやるわ。私は写真撮れなくて就活落ちたのに、こいつらだけ成功するなんて我慢ならないもの!
「待て、そこの地縛霊!」
あーらら?どうやら私の噂を聞きつけて、また霊能者が来たみたいね。若い男の子の声だわ。さて、今度はどんな馬鹿かしら。
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