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【1・自殺の名所】
〇〇県〇〇町の郊外に、
〇〇岬と言う自殺の名所が有る。
ほぼ直角に切り立ったその岬の崖は、まさに言葉の通り断崖絶壁。
風が強くない日でも海流の関係で付近の波は非常に荒く、
岬の突端の崖から飛び下りようものなら、まず助からないだろう事は容易に想像ができる場所である。
この岬、自殺の名所と呼ばれている訳だが、
その激しい波のせいか、遺体が上がった事がほとんど無い。
ここで、『ある疑問』が浮かんで来る。
それは、
『なぜ、遺体が上がらないのに自殺者が〇〇岬の崖から飛び下りたと分かるのか』という事だ。
それは、もちろん
『人間らしき影の様な物が崖から落ちて行くのが見えた』などの目撃証言が数件有ったというのも、そうなのだが、
それに加えて、行方不明者の遺書が見付かるのとほぼ同時期に、岬の入口に設置された『立入禁止』の看板とバリケードが破壊されているのが発見される。
そして、それらの事から
『恐らく自殺者はバリケードを壊し、この岬の崖から飛び下りたのであろう』という推測、憶測が飛び交い、
かくして〇〇岬はほとんど遺体が見付からないにも関わらず、『自殺の名所』と呼ばれるようになってしまったという訳である。
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