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暗がりの森の中で、俺は溜息を吐いた。
色も音もない森に漂う冷たい空気。それは体にまとわりついてきて、まるで「あの世」に連れて行く幽霊の手のようである。
「いいね、こいつは当たりだ」
慣れたものである。絡み付く手を軽く振り払い、街を背にして進んでいく。
月明かりが時々行く先を照らし出してくれる。だが、それが正しい道とは限らない。俺は気配だけを頼りに、道無き道を進んでいく。
目的地は、この森の向こう。
化物の噂の大元である。
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