人生初だからって

7/7
221人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
合同稽古は、ほぼ互角稽古だ。 盆休みという事もあって、県外に出てしまった者も里帰りして来て参加しているから、その稽古はなかなかキツく面白い。 慶司は、ウォーミングアップして、さっそくその稽古の輪に入って、数日ぶりの稽古に身を投じた。 老若男女問わずに集まる剣士達。 剣道大好きな人間なら誰でもOK! このノリは、響が以前話していた毎週金曜の夜に開催中の、桜乃鷹剣道同好会……、 それに似ているよなぁなんて思う。 「いつでも来てくださいよォ♪」 あの時の響の笑顔が明るく思い出させる。 特に何もない金曜日。 シフトが、午前7時から午後3時の一直の時、午後11時から翌朝7時までの三直の時、 そのうち、参上しようと考えていた。 この時、「はっ!」と慶司は気がついた! 今朝も、(かのじょ)に言ったけど、彼女のお父さんへの挨拶は……やはり、剣道という共通の趣味にしよう! 響はどう思うかな? 「大切なお嬢様と交際をしている」 それを彼女の両親…… に彼女父親という存在。 難攻不落のミッションをクリアするには、俺という人間を知ってもらうには、これが一番! 我ながら良いアイデアに、力が入ってるのが慶司自身でもわかる。 目の前の相手 その動き…いつになくよく見える。 すっと剣先外したのが見える。 小手?それともフェイクで? 慶司は、左足を斜めに引きながら竹刀をほんの少しだけ上げ、小手に来る打倒を払い ぐっと剣先を相手の喉元につけ、正中線をしっかり取り…… メェェーンっ! バンッ!と右足を踏み込んで、面を放つ……が、ちょいと近間過ぎて不発。 相手とぶつかり合う鍔迫り合いの形になって踏ん張る。 カッシッーン……! その衝動で面金がぶつかり、金属音が響く。 稽古相手は慶司よりもかなり年が上。 こちらの企業のベテラン剣士。 垂れネームには農業系の企業名が合皮で縫い付けられ『御子柴』とかなり珍しい苗字が縫い付けられてる。 その御子柴と面金を通して目が合った。 「ケイくん〜のってんなっ!」 なんて声をかけられた。 その間にも、互いに互いの隙を探り続けてる。 「へへっ、試合これから 連チャンなんスよ!」 「へぇ〜♪」 慶司と御子柴は、この瞬間… 互いの隙を見て同時に手元上げ… オメェェエ〜ン! メェェンヤァっ! 互いの面に竹刀を放ち、ばっと後方へ下がっていく。 引き面は残念ながら相打ち。 「御子柴さんっ!まだまだっー!」 「おおっ!」 共に中段。 再び、響く虎の如き咆哮。 慶司の気合いは益々みなぎる。 日本全国にあるP○○・○○es㈱グループ その剣道部の頂点決める 『ALLーP○○・○○es㈱』 それに出場するために、代表決める八月下旬に行われる部内試合もあるけど、近いうちに挨拶兼ねて参上する『 桜乃鷹剣道同好会』 遠い昔出会ったあの時の職人のおじさん。 あの人が恋人の親父だなんて……。 正直に言うとあまり話すの上手くなく、気の利いた事の言えない自分。 「長瀬慶司」という自分をしっかり伝えるのは、剣道…という共通の事。 もちろんしっかりと挨拶するけれど、(かのじょ)の親父はどんな剣道するのか? “鬼の山口 ” そう呼ばれていたと、前に、副主将の乾がこう言い、苦手だと言っていた。 無敵と思われる乾の母校は、かつての強豪校K高。 (彼女)の親父はK高剣道部最強のOB…なのだから。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!