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合同稽古は、ほぼ互角稽古だ。
盆休みという事もあって、県外に出てしまった者も里帰りして来て参加しているから、その稽古はなかなかキツく面白い。
慶司は、ウォーミングアップして、さっそくその稽古の輪に入って、数日ぶりの稽古に身を投じた。
老若男女問わずに集まる剣士達。
剣道大好きな人間なら誰でもOK!
このノリは、響が以前話していた毎週金曜の夜に開催中の、桜乃鷹剣道同好会……、
それに似ているよなぁなんて思う。
「いつでも来てくださいよォ♪」
あの時の響の笑顔が明るく思い出させる。
特に何もない金曜日。
シフトが、午前7時から午後3時の一直の時、午後11時から翌朝7時までの三直の時、
そのうち、参上しようと考えていた。
この時、「はっ!」と慶司は気がついた!
今朝も、響に言ったけど、彼女のお父さんへの挨拶は……やはり、剣道という共通の趣味にしよう!
響はどう思うかな?
「大切なお嬢様と交際をしている」
それを彼女の両親……
特に彼女父親という存在。
難攻不落のミッションをクリアするには、俺という人間を知ってもらうには、これが一番!
我ながら良いアイデアに、力が入ってるのが慶司自身でもわかる。
目の前の相手
その動き…いつになくよく見える。
すっと剣先外したのが見える。
小手?それともフェイクで?
慶司は、左足を斜めに引きながら竹刀をほんの少しだけ上げ、小手に来る打倒を払い
ぐっと剣先を相手の喉元につけ、正中線をしっかり取り……
メェェーンっ!
バンッ!と右足を踏み込んで、面を放つ……が、ちょいと近間過ぎて不発。
相手とぶつかり合う鍔迫り合いの形になって踏ん張る。
カッシッーン……!
その衝動で面金がぶつかり、金属音が響く。
稽古相手は慶司よりもかなり年が上。
こちらの企業のベテラン剣士。
垂れネームには農業系の企業名が合皮で縫い付けられ『御子柴』とかなり珍しい苗字が縫い付けられてる。
その御子柴と面金を通して目が合った。
「ケイくん〜のってんなっ!」
なんて声をかけられた。
その間にも、互いに互いの隙を探り続けてる。
「へへっ、試合これから
連チャンなんスよ!」
「へぇ〜♪」
慶司と御子柴は、この瞬間…
互いの隙を見て同時に手元上げ…
オメェェエ〜ン!
メェェンヤァっ!
互いの面に竹刀を放ち、ばっと後方へ下がっていく。
引き面は残念ながら相打ち。
「御子柴さんっ!まだまだっー!」
「おおっ!」
共に中段。
再び、響く虎の如き咆哮。
慶司の気合いは益々みなぎる。
日本全国にあるP○○・○○es㈱グループ
その剣道部の頂点決める
『ALLーP○○・○○es㈱』
それに出場するために、代表決める八月下旬に行われる部内試合もあるけど、近いうちに挨拶兼ねて参上する『 桜乃鷹剣道同好会』
遠い昔出会ったあの時の職人のおじさん。
あの人が恋人の親父だなんて……。
正直に言うとあまり話すの上手くなく、気の利いた事の言えない自分。
「長瀬慶司」という自分をしっかり伝えるのは、剣道…という共通の事。
もちろんしっかりと挨拶するけれど、響の親父はどんな剣道するのか?
“鬼の山口 ”
そう呼ばれていたと、前に、副主将の乾がこう言い、苦手だと言っていた。
無敵と思われる乾の母校は、かつての強豪校K高。
響の親父はK高剣道部最強のOB…なのだから。
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